JP-60

2016/04/27

JP-60組立 送信部の安定化

送信部の安定化を図ってみた。

現状での事象は、CWモードにおいて、長時間送信をしていると、キーアップした時に、異常発振する。この時の症状は、基本波の漏れレベルは変化せずに、約58MHz当たりで発振する。パラスティック発振のというよりも、単信号での異常発振であるが比較的安定して異常発振状態が継続する。この時の終段コレクター電流は200mA程度だ。
この状態に落ちいると、キーアップ/キーダウンを繰り返しても、異常状態から抜け出せない。

どうすれば、この状態になるのか、色々やってみて分かったことは、温度である。トランジスターが自分自身の発熱である温度(かなり熱い)になると、前述のモードに落ちるようだ。これは、終段かドライバーのトランジスターが怪しいが、切り分けはできていない。この辺りをドライヤーで暖めることで、事象を再現させることができた。
このことは、終段のバイアス電流値によっても発振しやすくなることと、事象が一致する。バイアス電流を比較的大きい60mAぐらいにセットすると、この事象が起こりやすい。つまり終段が発熱により温度上昇するからだ。

Dscf0950
代わり映えしない画像だが、調整の様子だ。

アンリツのパワーメータで出力を計測している様子だ。(画像の意味はあまりありません。時間とともにレベルが変化するのですが、CWでは一定なので、途中でキーアップした時の画像です。ダイナミックレンジもあまりないのでキーアップ時のレベルもあまり意味がありません。)こんなので、やってます、程度の絵です。
Power

では、安定化のために、採った対策例を記しておく。

①L1,L2のタンクコイルをマイクロインダクターから、トロイダルコアに変更する。
このマイクロインダクターはCW連続で送信するとかなり熱くなる。トロイダルコアに変更することで、終段の効率が上がって、終段の発熱を抑えることができる。
コイルデータはT37-6に0.26mm径のポリウレタン線を22回巻く、実測で約1.8uH程度であった。

②ドライバーのゲインを下げる。
前述の①の対策を行うと、出力電力が約1.8Wまで増加する。これは、想定より出すぎだ。これをドライバーのゲインを下げて調整する。この2SC2851は170MHzで使うことができる石で高域でかなりゲインが高い。オリジナル回路でもこの辺りを気にしているのか、R84とC89で調整している様だ。C89は103が付いているので、DCに近いところではゲインが下がっているが、HF帯では結構ゲインがあるはずだ。
対策として、C89を外した。これで、出力電力は、1.2Wまで低下した。もう少し下げても良いかもしれない。この時は、R16(51オーム)を68~100オームに変更すればいいと思う(未確認)。R16は電流帰還によりゲインを下げる役割がある。51オーム時でドラーバーのアイドル電流は約20mAとなっていた。

実測データーをメモっておく。(終段の電流値)
初期時(温度が室温時):アイドル時20mA(設定値) 送信時260mAで約1.2W出力。
連続送信時(ヒートシンクの温度が上がった時):アイドル時100mA 送信時285mAで約1.1W出力。
アイドル電流で、熱暴走することはないがCW連続送信直後のアイドル電流は100mAを超えている。キーアップで急速に電流が低下する。


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2016/04/25

JP-60組立 AFアンプの安定化のヒント【追記】

NJM386を使ったAFアンプ周りが不安定で発振することがある。通常の音量であれば問題ないレベルだと思うが、さらに安定化するための実験を行った。

回路的には386で46dBとその前段のQ20によるアンプがあるのでかなりの高ゲインになっている。事象からスピーカー(負荷)を接続しない場合は、ボリュームを上げていっても発振することはない。
負荷が接続され、ノイズ等の信号を増幅すると386に電流が流れ込み、コモンインピーダンスによって前段(多分Q20あたり)に帰還することで発振すると当たりをつけた。

386の電源プラスラインを見ると独立していて、Q20のラインと共通インピーダンスを持つところはない。となると、グランド側だ。パターンを切った貼ったして調べるのが常道だが、借用している基板なので荒っぽいこともできない。
ならば、ということで簡単にワニ口クリップ付きのジャンパー線を使って試してみた。


Jp60_gnd_1

基板への電源供給のラインを変えてみた。
通常は写真の赤丸のところへプラスとマイナスの12Vを供給する。ここで、マイナス側だけをワニ口のついたリード線で黄色の丸のスピーカー側のグランドへ接続する。これで、発振する限界点が上がる。
さらに、私の試験環境では2系統の出力を持つ電源で、本体側とは別系統でVXO側に12Vを供給している。(マイナス側は本体側と共通だ)このVXO側のマイナスを外す。写真のオレンジの丸。これで、発振余裕度がかなり上がる。ノイズで大音量になるため、ボリューム最大までは上げることができなかったが、かなり良くなる。

ケースに組み込む場合も同様にすれば、かなり改善されるはずだ。
ただし、簡単ではないのが、RFのコネクターとかどうしてもケースに接続が必要な部分も出てくる。これで、アース周りの電流の流れが変わる。しかし、弱そうな箇所はAFアンプ周りのグランドなので、解決策が見えてくると思う。個別に対応するしかない。

パターンをいじれば良いのかもしれないが、切った貼ったの大手術になりそうだ。完全な解決策にはなっていないが、課題解決のヒントにはなっていると思う。

【追記2016/4/26】===========================================
朝の通勤電車の中で、ハタと思いついた。
コモンインピーダンスは電源のグランド側で発生している。上記の対策はそのグランドの電流経路を変えて対策を取る案だ。

気がついたのは、電源経路はそのままで、負荷(スピーカーライン)のリターン(電源への戻り)をプリント基板のアースパターンではなく、直接リード線で戻してやれば、コモンインピーダンスによる帰還は防げるはずだということだ。

早速やってみた。
Jp60_afamp_sp1
赤丸のところは、12Vの給電点だ。ここは、プラスとマイナスを接続しておく(想定通りの配線)。青のスピーカーのグランド側を赤丸のグランドに直接接続する。これで、Q20との共通インピーダンスを無くす。
黄色のVXOの配線はグランド側を接続しても、しなくてもAFアンプの発振とは無関係だ。

効果の程は、先の電源分離と同じだ。今回のAFアンプの発振とは関係ない話だが、ボリュームを上げていくと、NHK第1、第2のラジオ放送が混入し始める。当地は菖蒲(久喜)の送信所から10Km程しか離れていない。この現象は、当地ではよく経験するところだ。

今回の方式のほうが、送信系の電源経路が変更とならない分、リスクが小さいと思う。スピーカーのアースの取る位置を変えるだけだから。こちらの方がおすすめだ。

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2016/04/24

JP-60組立 送信部

平日に少しずつやったのだが、完了していない。
送信部を組立てて、特性を測っている。

Dscf0922
調整中の様子だ。

Dscf0918
スプリアス特性。第2高調波は-40dB弱になっている。(2f=-38dB,3f=-59dB)

この時、CWモードにして終段のコレクター電流は235mAで約0.9Wが得られる。バイアス点は微妙で室温時約20mAにセットした。これは、CWの連続送信で約60mAまで増加する。終段が発熱するとアイドリング電流も増加するので、最初の点を控えめにしてある。DSB時にこれで十分かはよくわからないのだが。

調整のポイントを記録しておく。
7K相当のコイルの同調点は非常にブロードだ。抵抗を抱かせてありかなりQは低い。コア位置は比較的入ったところでピークがある。(分かりづらいが)

キャリアサプレッション調整のVRは多回転のため、どこにしたら良いかわかりづらい。予めQ17のベース電圧をテスターで測っておき、VR5を回してQ18のベール電圧が同じぐらいにしておく(約4.9V)。この状態で受信機を使ってキャリアバランスを取るとうまくいく。

気になる点があるが、解決に至っていない。もう少し、突いてみようと思う。
①L1、L2の発熱。
CWにして、連続送信すると結構熱くなる。
少し大きなaitendo製の1.5uHのコイルに付け替えてみたが、あまり変化はなかった。
仕方がないので、T37-6トロイダルコアに巻いてみた。これだと、発熱しない。パワーも出すぎてしまう。(もう少し絞る予定)

②CWで長時間送信した後、CWキーをオープンにすると約60MHz付近で異常発振する。
これは、レアで終段もしくはドライバーの石が熱くなると起きるようだ。DSBならば問題ないと思う。
ドライバーの石あたりが怪しそうだ。ftの高い石なので暴れそうだ。

③CWのON/OFF比が-30dB程度。ドライバー当たりを一緒にOFFすればもう少しアイソレーションが取れるかもしれない。CWはおまけ程度なので・・・

L1,L2を交換しているところ。小さいのがキットに付属されているもの。少し大きいのがaitendo製。はずす時にリード線が取れてしまった。
Dscf0930

L1のみを交換してみた。やはりL2が発熱する。
Dscf0924

両方を交換してみた。この時1.8Wの出力を得る。これはパワーの出過ぎ。もう少し絞る予定だ。
この時終段のコレクター電流は48mA/307mAであった。
Dscf0928


つづく。

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2016/04/17

JP-60組立

JARL QRPクラブの60周年記念企画、JP-60を組立ててみた。もう既に配布も始まっていると思うが、完成基板製作担当としてお預かりしたものだ。21MHz帯DSBトランシーバでCytecの内田さんの設計による物だ。企画者の斎藤さん(JE1ECF)のご尽力による大作だ。

実は4月の初めにお預かりしたのだが、4月から環境も変わり飲み会が続いて、先週は会社関係のお葬式と何かと忙しかった。そのせいか、風邪を引き込み体調も思わしくない。やっと、復調したところだ。自分ではめったに風邪を引かないと思っていたが、どうも年に1,2回は引いているようだ、摂生不足の何者でもないのだが。

製作の期限もあるので、ちょいと焦っていた。金曜日の夜から着手したのだが、この休みでは終わりそうにない。できたところまでをアップしておく。

金曜日の晩に、VXOの組立て、調整を完了。
Dscf0905

チェックした内容を回路図に書き込んでおいた。ご覧ください。
Jp60_vxo_1

pdf版「JP60_VXO.pdf」をダウンロード

土曜日、1日かかって受信部が完成。火入れは日曜日から。流石に部品点数が多いので、組立てもけっこう大変だ。

以下がちゃんとできれば、きちんと動くはずだ。
①部品の取り違えをしない。
 抵抗はテスターで値を読む。1%級の抵抗もあるのでカラーコードの読みも難しい。また、色も微妙に違うので、テスターで測るのが確実だ。
コンデンサーも容量計では測ってみた。103と104のセラミックは高誘電体タイプなので容量値が小さいが、これは正常だ。

②ハンダ付け
言葉では表現しづらいが、ハンダを付けるのではなく、コテを当てたところへ、糸ハンダを流し込む。これでフラックスも浸透して、スルーホールを通して部品面までハンダが浸透していく。ちょっと長めにコテを当てるのがコツだ。

③極性を間違えない。
メイン基板のU2 78M09の取り付けは部品資料をよく見てほしい。ケミコンも極性がある。実は私も幾つか間違えた。火を入れる前に冷静になってチェックが必要だ。組立てと別の日にすると良い、気分が変わるから。
Dscf0910

チェックした内容を回路図に書き込んでおいた。ご覧ください。
DSB特有のチューニング(選局)の難しさがある。慣れの問題だが。今日は沖縄の局がよく聴こえていた。
RITの可変範囲は700Hzと小さい。受信のファインチューニングの位置づけだろうか。
Jp60_main_1


pdf版「JP60_main.pdf」をダウンロード


JP-60は斎藤さんのご尽力で、部品が袋に分けて収められている。分けて熱封印されていて、これが製作にすごく助かった。大量の部品の中から探すのは大変で組立ても効率に大きく左右する。
60セット分の仕分けも大変であったろうと思うがこれも斎藤さんの経験と情熱によるものだと思い、感謝、感謝である。
Dscf0915


もうちょっとで完成だが、今日はここまで。集中力が低下してくる。ケミコンの極性を間違ったりしてくる。
送信部は、受信部よりも部品点数が少ないので、少しは楽だ。しかし、部品を取り付けて、回路図と部品表に色鉛筆で色をぬる作業が単調で厳しい作業だ。
Dscf0911


ここまでで、気づいた点を書いておく。
①VXO部のレギュレーターIC(U1)はJRC製の78M09がキットについてくるが、元々78L09用で基板が設計されているので、足穴が小さくて入らない。穴を大きくするか、78L09(TO-92パッケージ)を実装する。

②受信部のAFボリュームを上げるとAF段で発振する。実用音量では問題ない。スピーカーを付けないでボリュームを上げても発振はしないので、負荷があるときに電源ラインが振られて前段に回り込んでいると思われる。電源ラインの引き回しで回避できるかもしれない。

※ 熊本地震で被災された皆様 お見舞い申し上げます。


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