7MHzリニアローディング・ダイポールアンテナ
待望の水平系アンテナをやっとのことで仕上げた。
全長は12.4m。フルサイズの6割程度しかない。短縮方法はリニアローディングという方法だ。トラップコイルを使うよりも、帯域が広いのが特徴だ。今までも、これを使たグランドプレーンアンテナ(GP)を長年使ってきた。耐久性もそれなりにある。このGPも同じく6m程度しかエレメントがないが、前サイクルの時は、ヨーロッパの奥までできた実績がある。
今回、ダイポールにしたのは国内コンテストで限界を感じたからだ。こちらも100W近く出ているのに、呼んでもまたCQを出されてしまう、まったくの空振りだ。QRZぐらい返ってきてもよさそうなものだが、かすりもしないことが何度かあった。相手のパワーが大きいのか、耳が悪いのか、それもあろうが、どうもこちらがGPであることも原因ではないかと思うようになっていた。それで、水平系のダイポールアンテナが欲しかったのだ。
もう何年も前から欲しいと思っていたが、重い腰を上げて、やっと上げることができた。
今回もカットアンドトライだが、できるだけ寸法を残そうと、記録を取っておいた。次回の参考になるはずだ。最後にpdfの図面を置いておく。
では、製作記録編だ。
いきなり詳細に入ってしまうが、公称630cmのグラスファイバー製の釣り竿を2本つなぎ合わせて、ダイポールアンテナにする。実際の長さは620~624cmぐらい。接合部を引っ張ると長くなるが、やりすぎると割れる恐れがあるので要注意。
問題は釣り竿を2本つなげてかつ、マストにどうやって縛り付けるかである。ここが出来てしまえば、ほぼ出来たも同じだ。
ここでは、20x40x1000のアルミ製チャネルを使っている。もう少し強度が欲しいところだが、ちょうどよいのが見つからない。
これに水道用の塩ビパイプ(確か25ファイぐらい)を縦にカッター(ディスクグラインダー)で1本溝をつける。(切れ目を入れる)こうすると、釣り竿の根元にテーパーが付いているがうまく嵌まってくれる。グラスファイバーは全体では強度があるは、1点に応力が集中すると簡単に割れてしまう。うまく力を分散させて挟み込むような方法で固定したいところだ。
ここでは、4mmのステンレス製ボルトとステンレスバンドで締め付けている。これはホームセンターでやっと見つけた。「ユニックバンド(U3S100)」というものだ。専用の留金具があるのだが、手で締め付けるようなので、ボルトで締め上げることにした。が、バンドに4.2ファイの穴を開けてしまうので、強度が心配だ。結局、補助的に針金でも縛り上げた。針金は耐久性がないので、数年で交換する必要がある。この取り付けの決定版が見つかっていない。
ボルトの頭側に鉄製の板を入れている。ステンレスバンドが引っ張ることによって歪むのを防止している。これも鉄製なので、そのうち錆びてしまうだろう。
これは、マストにつけるUボルト部分だ。Lアングルは亜鉛のどぶ付けメッキ品があったの使う。Uボルトはステンレス製。これをケチるとタワーのてっぺんでUボルトを金ノコで切断しないといけないことになる。
回転止めの金具は、秋葉原のロケットで購入した亜鉛メッキのもの。Uボルトが1本なので、強度的に心配だが、くるくる回るぐらいであろうから、とりあえずこれで様子を見てみる。
最初はアルミのコ字チャネルのみで考えていたが、どうも強度不足。手持ちの3mm厚30x30x500のアルミ製Lアングルをつけて補強した。中央部の応力が最大になるはずだ。台風や春一番に耐えることができるだろうか。ちょっと心配だ。しかし、外観だけはスマートにできた。(自画自賛)
これは、ローディングコイルに相当するエレメントを支えるセパレータだ。外形10ファイのABSパイプ。ABSは紫外線などの耐候性はあまりないとされているが、GPで既に5年以上の実績があるので、当分の間は大丈夫だろう。
仕上げの段階で、セパレータがきれいに並ぶように整列を掛ける。
ベランダでは狭いので、中央部のみ組み立てる。エレメントを伸ばすのは、マストに仮止めして行う。シーソー工法?を使う。(一人しかいないので写真がないが・・・、猫の手が必要だ)
これは、給電点側のセパレーターだ。本来この間は接続(ショート)しておくのだが、共振調整用に切り離しておく。
こちらは、先端側のセパレーター。このようにエレメントの処理をしておく。エレメントの固定には、ナイロン(黒色)のタイラップを使う。紫外線に弱いので、上から自己融着テープで紫外線が入らないようにしておく。こうすると、機械強度が継続して得られるようになる。
釣り竿のつなぎ目も自己融着テープを巻いておく。しばらく使っていると、緩んで竿が引っ込んでしまうことになる。エポキシ接着剤で固定してしまうと、取れなくなってしまうので、これも具合が悪い。なので、自己融着テープで処理をする。
これは、中央のセパレーター。バインド線で押さえてあるが、パイプには固定されていないので、自由に動く。釣り竿は、風を受けて大きくしなる。段々、銅のエレメントも伸びるし、リニアローディング部分がたるんでくる。これは、仕方がない。強力なゴムでテンションを掛けるなど細工をしたこともあるが、それ自体の耐久性がないので、あんまり気にしないのが一番のようだ。
中央のロッドにはエレメントが巻き付けてある。コイル状になるがインダクタンスを期待したものではない。銅線が緩まないように巻き付ける。コイルの効果はないが、道のりが増えるので、全体で15cmほどロッド長よりも長い銅線を巻き付けている。
両側のリニアローディング部分をベランダで組み立てる。ベランダでできるのはここまで。後は屋根の上と、マストに仮止めしてからだ。短縮してあるとはいえ12m超は結構長いので取り扱いが難しくなる。
給電部。1.5mの5D2Vを巻いて、コアに通しておく。コアはトーキン製のEMI用のものだ。多分透磁率が2000ぐらいはあるものだと思う。積極的にバランを入れようかとも思ったのだが、将来的に?、改造を考えているので、とりあえずの給電部分となる。自己融着テープで固めてある。
いきなり、マストのトップだ。景色もいいのだが、ちょいと落ち着かない。屋根の下部で概ね共振点が出ていることを確認して、本番の高さまで持ち上げる。この前に、マストに仮止めして、シーソー方式で両側のエレメントを伸ばしていく。銅線のエレメントを巻き込んでいく。ロッドよりも約15cmほど多く巻き込んである。
そしてこの写真のようにワニ口でショート位置を変えて、共振点を追い込んでいく。大体5、6回ほど調整したであろうか。アンテナアナライザイーRF-1で調整するが、アンテナからの輻射のせいか、手で持つとボディーエフェクトが生じた。送信機を使ってSWRも確認しながら進める。
最終的には、セパレータ端から20cmのところとした。インピーダンスを見ると、共振点で25オーム付近を指していて、RF-1によると共振点でもSWR1.8程度が最低であった。想定はしていたが、短縮することにより結構インピーダンスが下がってしまう。短縮アンテナの宿命だ。
給電部の様子。下側に引っ張て来ているのは、将来ここにコントロールボックスを置こうかとも考えている。給電部をマストに縛り付けようかと思ったが、ボディーエフェクトがあったので、グラスロッド(農業用)を使って、浮かして固定している。ボディーエフェクトもRF-1の問題かもしれない。切り分けが付いていない。
ワニ口をジャンバー線に置き換えた。実際には、タワーの上まで100VのAC電源を引っ張て、60Wでか半田ごて(セラミックヒーターでワット数以上に強力)を使ってはんだ付けをした。アクロバットのようだ。間違って、こて先でも握ったら、大変なことになる。まあ、給電部付近で手が届くのでこんなこともできる。
さて、家の周辺から色々な角度から撮ってみた。何と長閑な畑の真ん中か!
さて、送信機端でのSWR特性は以下の通り。それなりに、ブロードだが1.0にはならない。
7.00MHz 1.3
7.05 1.3
7.10 1.35
7.15 1.4
7.20 1.5
測定には、このRF-1。20年以上前に出張に行っている人に現地で購入してきてもらったもの。つい最近まで、これを持っていることさえ忘れていた。
寸法は、下記のpdfの通り。エレメントは園芸用の#20(0.9mm径)の裸銅線。100mで1000円ちょっとと廉価だ。
「7MHz_Liner_Dipole.pdf」をダウンロード
さて、GPとの比較だが、夕方4時ごろの国内QSOを聞いてみた。GPと変化がないか、概ねの局はレベルが上がる。国内でも近畿、関東当たりの局だ。1局だけ、GPの方が強力な局があった。CV48を改造した給電点4m、フルサイズのGPを使っている関東の局は、圧倒的にGPの方が強かった。偏波によるものだろうか。直接波だろうか、電離層を介すれば偏波面は回転すると聞いているが。もう少し使い込んでみると面白そうだ。
DX局も色々聞いてみたい。
ダイポールは回転もできるので、8の字特性も体験してみたいと思っている。今日は暑くて日焼けしてしまったが、これでしばらく楽しめそうだ。
| 固定リンク
「アマチュア無線」カテゴリの記事
- アンテナ切替器 for FT-991(2023.05.17)
- 2022年アマチュア無線総括(2022.12.29)
- BBQ(2022.11.07)
- 近況(2022.03.24)
- 2021年アマチュア無線総括(2021.12.27)
コメント
こんばんは。
ついにリニアローディング完成されたんですね!
それにしてもすばらしいアンテナ群で羨ましいです。
7MHzのJT-65は今日聞いた限りでは、南米も開けているようです。
当局の電波は届きませんが!
QROではなくQRPで楽しまれてください!
コンテストは、パワーが入りそうですが!
投稿: ja6irk/1 | 2016/10/08 22:32
岩永さん、こんばんは。
ここしばらく、DPとGPの聞き比べをしていたのですが、国内はほぼほぼDPの方がレベルが高いようです。ただし、直接波伝搬で相手が垂直系のアンテナを使用していると、GPの方が圧倒的にレベルが高いです。偏波面の違いを実感しました。
北海道、沖縄辺りではまだDPの方がいいですが、BYあたりでほぼ同じぐらいでした。
W6になるとGPの方がいい局がありました。GPはかなり離れないと優位にはならないようです。
もう少し、聞き比べをやってみようと思います。
また、アンテナを回してみたのですが、8の字特性は実感できていません。ピーク点はブロードだと思うのですが、ヌル点もよくわかりません。HFのQSBのある環境では難しいのかもしれません。
11月にはQRPコンテストがあるので、このDPで参加したいと思っています。国内なので結構期待できそう?って思ってますがどうなることやら。QRPを楽しみたいと思います。
昨日から大学の無線部のOB会で草津温泉に行っていました。総勢40人超えで、会ったこともない超OBから懐かしいメンバーとの再会と無線づけの2日間でした。
投稿: JK1LSE/本田 | 2016/10/09 22:56